9月下旬〜 【旧暦】伝承行事展示『中秋のお月見』

今年の旧暦8月15日は新暦の9月25日。満月の2日前のちょっと欠けた月が「中秋の名月」です。旧暦の日にちは概ね月の満ち欠けに沿っていて、15日の前後が満月なのですが、多少の揺らぎがあってややこしいですね。何はともあれ、澄み切った秋の空の月は格別美しい。そしてこの時期は収穫の季節です。実はこの日は「芋名月」とも呼ばれ、このことから「月見」が秋の実りへの感謝の行事であることがわかります。さらには、旧暦9月13日(今年は10月13日)の十三夜を「後の月」といい、両方の月を愛でる風習も広く行われています。その別名は「栗名月」や「豆名月」。芋、栗、豆、なんだか豊かな実りの秋の風景が思い浮かんで、お腹が空いてきますね。
みなさんがよく知っているように、「月見」にはススキと月見団子をお月様にお供えします。なぜススキ?なぜお団子?もちろん、この時期にススキの穂が美しいからということもあるでしょう。それだけではなく、この植物には魔除けの力があると思われていました。稲に似ているということもあったかもしれませんね。お団子は丸い形がお月様みたいだから?でも実はお団子が丸くない地方もあるんです。静岡ではヘソモチといって、真ん中が凹んだ形、大阪や京都では里芋型で上にあんこが載ったものが月見団子だそうです。それぞれ、真ん中の溝に水がたまるから豊作につながる、白い餅にあんこが載っている姿を月に雲にたとえるなどといわれています。また、関西の団子が里芋型なのは、米作以前の主食が里芋だったからという説も。このように、多様な風習の奥にはたくさんの物語が潜んでいるんですね。よく知っている風習でも、「なんでだろう?」とあれこれ考えてみるのも面白いと思います。月へのお供えのほか、この日、他にはどんな風習があるでしょうか?いくつかあげてみましょう。
・この夜は誰の畑の作物を盗ってもいいし、子どもたちがお供え団子を竹竿で付いて取って食べてもいい。(広い地域で)
・稲穂を高い竿の先につけて掲げる。(和歌山)
・苞に赤飯を入れて枝豆を刺して狐のいる山に持っていく(宮城)
・新藁で大縄をなって綱引きをする。(十五夜綱引き 南九州~南島地方)
・子どもたちが藁の腰蓑と笠をつけて、四股を踏み大地を踏み鳴らしながら踊る(ソラヨイ 鹿児島)
・獅子舞や綱引きをして、小豆をまぶした餅を食べる(沖縄)
この夜の子どもたちは、神様の化身。だから、畑の作物やお団子を盗っても怒られない。藁を纏って踊る姿は、山(異界)からやってきた龍神でもある。どれも月の神(水を司ると言われる)や大地の神への感謝を表す風習です。
この「月見」の行事は日本のみならず、お隣の韓国や中国にもあります。中国の「中秋節」では、月餅を供え、灯籠を掲げて月を拝みます。韓国の「秋夕(チュソク)」では、半月型のお餅を松葉で蒸した「ソンピョン」や里芋のスープを作って、祖先のお墓参りをし、綱引きや相撲を取る地方もあります。こんなふうに、アジアには、同じようでいてちょっと違う。違うようでいて同じ気持ちがこめられた行事がたくさんあります。この夜、月を見上げながら、同じアジアの仲間たちを思う日になるといいですね。


| 日時 | 9月下旬〜 |
|---|---|
| 対象 | どなたでも |
| 参加費 | 無料 |

下中菜穂造形作家 暮らしの手仕事・伝承行事研究
江戸時代の切り紙「もんきり」と出会い、暮らしの中で息づいてきた「切り紙」や伝統的な「かたち」、風習、行事などを研究。日本各地、中国などをフィールドワーク。書籍の出版やワークショップ、展覧会などを通して私たちの今の暮らしの中に活かす活動を続ける。「知る、やってみる、問い続ける」をモットーに、旧暦の日取りで行う実験的なワークショップ「旧暦カフェ」を主宰。




