7/29(金) 〜 伝承行事展示
『旧暦で行事をやってみる ~七夕~』下中菜穂

みなさんは、「旧暦(きゅうれき)」という言葉を知っていますか?

実は150年ほど前の江戸時代までは、今私たちが使っているカレンダー(新暦)とは違う暦(こよみ)が使われていました。これを「旧暦」と呼びます。この暦は月の満ち欠けに合わせて、新月が1日、満月が15日となるように工夫されていました。
人々の暮らしや行事は、長い間この暦に合わせて組み立てられてきました。

明治になって突然、これを太陽の動きにあわせた暦に変えることになりました。
なんと、その年は約1ヶ月も早くお正月が来てしまったのです。当時の人々はさぞびっくりしたでしょうね。それ以来、季節に合わせて行ってきた行事を本来とは違う日にやることになったのです。その混乱ぶりはどれほどだったか想像してみてください。
この出来事によって、意味がよくわからなくなってしまった行事もたくさんあります。
改めて旧暦に合わせて「やってみる」ことで、本当の行事の姿を探ってみましょう。

 

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●七夕はどこからきた?

7月7日の七夕は、もともと今の8月の行事でした。(2022年は8月4日です)
夏も盛りを過ぎ、ほんのちょっと秋の気配も混ざるころです。江戸時代の人々は七夕をすぎると、そろそろ秋だなあと感じていました。
織姫と彦星が天の川を渡って1年に1度会える日で、笹竹に短冊を飾り星に願い事をする。それがみなさんのよく知っている七夕だと思います。これは奈良時代に中国から伝わった伝説と裁縫などの手仕事の上達を願う風習がもとになっています。
しかし、実はこの日には、これとは少し違う謎めいた風習がたくさんあります。中国から来た文化と日本にもともとあった風習とが長い時間をかけて混じり合いさまざまな形で伝えられているのです。

 

●七夕の謎

この日に、お墓や井戸の掃除、道の草刈りをしたりするところがあります。
また、川で泳いだり、水浴びをしたり、髪の毛や道具類、牛や馬を洗うなどという風習も。いったいこれはなぜでしょう?
七夕の少し前、旧暦7月1日は、「釜蓋朔日(かまぶたさくじつ)」といって、この日に地獄の釜の蓋が開くのだという言い伝えもあります。13~15日には「お盆」がありますね。かつてこの月は、ご先祖さまが帰ってくる特別な月でした。そう、七夕は「お盆」を迎えるために、身の回りや自分自身を清める日でもあったのです。そのため、星祭りとはちょっと違う風習が各地で行われてきました。その中から「七夕馬」と「七夕さん」をご紹介しましょう。みなさんもぜひ、お父さんやお母さんの田舎の行事について調べたり、おじいちゃんやおばあちゃんに話を聞いたりしてみてください。七夕にはまだまだ謎がいっぱいです。いっしょに七夕の謎を探ってみませんか。

 

●七夕馬

関東地方には七夕に真菰(まこも)という水辺の植物で馬を作るところがあります。この馬を笹飾りにつけたり、屋根の上に投げ上げたり、縄をつけて引回したりします。「お盆」の時にナスやキュウリでつくる「精霊馬(しょうろううま)」と同じように、ご先祖さまがこれに乗って帰ってくると考えたようです。笹飾りはご先祖さまが帰ってくるための目印でした。

 

●七夕さん

七夕に人形を飾る地方があります。
長野県松本市では、子供の浴衣や着物を人形に着せて軒につったり、紙でできた人形を作って笹に飾ったりします。
今回展示するのは山梨県の「七夕さん」と呼ばれる人形です。一枚の半紙を折って切ることで、無駄なくできています。七夕が過ぎてもつるしておくと「オルスイさん」という泥棒よけのおまじないになるそうです。面白いですね。

日時 7/29(金) 〜

下中菜穂造形作家 暮らしの手仕事・伝承行事研究

江戸時代の切り紙「もんきり」と出会い、暮らしの中で息づいてきた「切り紙」や伝統的な「かたち」、風習、行事などを研究。日本各地、中国などをフィールドワーク。書籍の出版やワークショップ、展覧会などを通して私たちの今の暮らしの中に活かす活動を続ける。「知る、やってみる、問い続ける」をモットーに、旧暦の日取りで行う実験的なワークショップ「旧暦カフェ」を主宰。

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